この10年で『iPhone』は単なるガジェットではなくなった。

10年前、2007年の1月9日スティーブ・ジョブズは携帯電話を再発明すると語り、初代『iPhone』を発表。

そこから10年半、2017年9月12日(米国時間)に『iPhone8』がリリースされた。大方の予想通り「iPhone8」と「iPhone X」に2モデルがリリース。2年サイクルでメジャーアップデートを繰り返すという従来の製品サイクルを、Appleはついに打ち壊してきた。

この製品サイクルの変化はiPhoneの役割が社会において変わってきたことを示しているのではないだろうか。この10年でiPhoneがたどってきた変遷を振り返りつつ、考えていきたい。

消耗品だったiPhoneはいよいよ、消耗品の域を抜ける

僕がはじめてiPhoneを買ったのは3GSの発表日。買ったのは3Gだった。

旧モデルになり少しだけ安くなったiPhone 3Gを購入して以来、僕はiPhoneユーザーだ。途中フィーチャーフォンやAndroid、PHSなどをサブで持っていたことはあるものの、メインの座はiPhoneから変わっていない。

愛用しているといっても過言でないほど日々使っているが、僕にとってiPhoneを含むガジェットはあくまで消耗品にすぎない。PC、スマートフォン、タブレットといった日常的に使うガジェットは、物理的に壊れるより先に性能的な面に起因して買い換えをすべきタイミングが訪れることが多い。

ただここ数年のiPhone、そして今回発表された最新作を見ていて感じるのが、iPhoneは消耗品の域を脱したということだ。これはAppleとして意図していないのかもしれないが、少なくとも一消費者、特にiPhoneを指名買いしているユーザーにとっては実感できるものがあるのではないだろうか。

飛躍的に進化し続けた3G→3GS→4


初期のiPhoneは新モデルが出るたびに飛躍的に性能が向上していた。

僕自身iPhone 3Gから使い続けているが、3G→3GS→4までは新機種が出るたびに目を見張るほどの進化が見られた。ここにはハードウェア的な進歩はもちろんのことソフトウェアの進歩も関係している。

iPhone 3Gの発売と共にリリースされたApp Storeはアプリ開発者に巨大な夢を与えた。自分で作ったアプリが簡単に販売でき、世界中にユーザーに届けることができる。上手くあたれば一攫千金。そんなことを考えてアプリを作り始めた人も少なくないはずだ。

App Storeによってアプリ側が爆発的に成長することで、必然的にハードも追いつかざるを得なくなる。この頃のiPhoneは、一世代前のものを使っていると、新しいアプリを楽しめない(重くて動かない)なんてことも珍しくなかった。この進化はiPhone 4まで続いた。

「不の解消」から「より便利」への移行が始まった『iPhone 4S』


しかし、そのスピードはiPhone 4Sを境に鈍化しはじめる。処理速度やカメラといったハードウェアの進化がそこまで体感できるほど生じなくなってきたのだ。圧倒的な速度で進化してきたiPhoneだったが、ここで壁にぶち当たる。

そもそも、初期のスマホは性能的に不便なモノであった。レスポンスは悪いし、フリーズもする。その根本的な性能の低さが4時点で大きく改善されてしまったのである。故に4S以降は「不便の解消」フェーズから「より便利にする」フェーズに入り、利便性の向上を体感することがいままでより難しくなったのだ。

今のApple製品の基礎を作った『iPhone 5』

とはいえ、iPhone 5は大きな進化を遂げた。というのも4G(LTE)回線に対応し、通信速度面で飛躍的な向上をみせたからだ。ただあくまで、これはAppleの功績ではなく、通信事業者各社の功績だ。そしてこのタイミングで大きく進化を遂げたのはiPhoneだけではなく、全てのスマートフォンだったことも付け加えておかねばならない。

ちなみに、iPod時代から採用され続けてきたDock(30pin)端子を廃し、Lightningに移行したのもこのタイミングだ。デバイス内スペースの無駄を省くことが一番の目的だと思われるが、30pinのデバイスを買いそろえていたユーザーにとってはなかなかに打撃のある変化だった。


続くiPhone 5sでは再び成長が鈍化する。

体感できるほどの高性能化は少なく、Touch IDをはじめとした現在まで生きる機能追加こそあったものの、デザインが5と同じこともあり、4S同様成長が感じやすいデバイスではなかった。

ただ非常に興味深かったのは、5sのタイミングで発表された新色「スペースグレー」「ゴールド」だ。恐らくこの3色展開が上手くいったからなのだろう、以降iPadをはじめとした様々なデバイスで、この3色を含めた多色展開が用いられるようになった。

それまでシルバー単色だったiPadや、今ではMacまでもがカラーバリエーションを持つきっかけとなったのはこの5s時代の影響が大きいと思われる。

またフラットデザインに変更されたiOS7が搭載されたのもiPhone 5sからだった。

3世代同じデザインを踏襲した『iPhone 6』以降


6はどうだろう。

ここでの最大の変化は大画面化と6/6Plusの2モデル化にある。大画面化は賛否両論あったものの、目新しさや、時代の潮流に合わせた大型化を望んでいた人にっては強く響いた部分であっただろう。僕個人の周りでも6 Plusを手にして以降この大画面は手放せないと語る友人も少なくない。

一方6sは5sと同様、地道なスペックの向上とカラバリの増加、追加機能のみの変更だった。ForceTouchに心躍った人もいるかも知れないが、あくまで目新しい進歩はなかっただろう。


昨年の7。日本国内ではFeliCaの搭載が何よりも大きな変化だった。ただし、電子マネーやSuicaを利用しない層にとってはこのメリットは享受できない。

またデザイン面も、背面のアンテナ位置の変更やカラーバリエーションの変更こそあったモノの基本的には6からの流れを踏襲している。6以降の端末はそこまで大きな変化を感じられない人も少なくないのかもしれない。

iPhoneXに見たのは光か


6以降3年間ほぼ同じデザインを踏襲した中で、実質的にメジャーアップデート版として登場したのが今回のiPhoneXだろう。Tim Cookが「One more things…」とわざわざ語った。思いを込めたプロダクトだ。

今回の発表は名称的にもiPhone7sでは無く、iPhone8にするなど歴史あるアップデート版名称を踏襲しなかった。製品のラインナップ的にも、フラッグシップモデルと通常モデルというこれまでに無い展開へ変更してきた。

iPhone8はほぼiPhone7のマイナーアップデート版という機能・見た目だが、iPhoneXが実質的にはメジャーアップデートと呼んで良い。

デザイン面は全面ディスプレイの採用、ホームボタンの撤去など、全く新しいデザインへ進化。FaceIDなど全く新しい機能が搭載された。

最新モデルを追い続けることが正義ではない時代が近づいている

今回iPhoneXレベルの大きな変化は3年ぶりであることを忘れてはいけない。実質6以降大きな変化は今回まで起こらなかった。そして、Xという名を冠したプロダクトがでたことでつぎは8sか9かが読めなくなってきた。

ここまでを振り返ると、4までは毎年大きな変化が続いたが、4S以降は変化のスピードが低下し、2年、そして3年に1度の変化にとどまっててきている。

無論その背景にはスマートフォン市場の成熟もあり、iPhoneの場合は2年に1度のメジャーアップデートという周期の問題もある。ただし、そのメジャーアップデートすらメジャーではなくなってきているのも事実だ。

僕個人でいうと、5までは毎年買い換えていたが、4Sの頃に違和感を感じ、5以降は、2年に一度買い換えサイクルに変化した。7はSuicaユーザーのため買い換えたが、正直買い換えるべきか悩んだのも事実だ。

後ろ向きにいえば、成長が鈍化しているわけだが、前向きにいうと長く使えるものに変わってきているともいえるだろう。

Appleにとってみれば毎年買い換えてもらえるモノを作るのが利益的には良いのかも知れない。現状サイクルが伸びていると感じるのは彼らの意図するところか否かは分からないが、一消費者としては望ましいところだ。

今年初旬のiPhone10周年のタイミングで出したリリースでは「革命は続く」と同社は語ったが、それは常に革新的なプロダクトを出し続けることではないのかもしれない。

長く愛用してもらえる普遍的な製品を作り、常に最新のモノを追い求めることが正義という流れを変えることも1つの革命の姿ではないだろうと個人的には思う。

image by Apple

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